映画芸術

脚本家荒井晴彦が編集発行人を務める季刊の映画雑誌。1月、4月、7月、10月に発行。2016年に創刊70周年を迎えました!書店、映画館、Amazon、Fujisanほかにて発売中。

2010-01-01から1年間の記事一覧

試写室だより『たまの映画』 <br>たまたまたまの映画 <br>深田晃司(映画監督)

たま。 この名前に郷愁を覚える世代がある。私の通っていた小学校では、週に一度ホームルームの時間に、クラス全員で歌を歌う慣習があった。だいたいは『ランナー』や『愛は勝つ』など当時の流行歌が定番で、担任の先生の趣味で荒井由美こと松任谷由美もよく…

試写室だより『9月11日』 <br>興奮したまま家に帰るな <br>若木康輔(ライター)

『9月11日』を12月6日の午後、試写で見せてもらった。今年の文化庁映画賞「文化記録映画大賞」受賞作、『ただいま それぞれの居場所』の外伝みたいな映画である。『ただいま』で紹介された人たちなど、それぞれ独自の考えのもと介護施設を運営している…

『アヒルの子』『LINE』宣伝記 前篇<br>加瀬修一(プランナー/ライター)

今年『アヒルの子』『LINE』という映画の公開に宣伝協力として参加した。 無名の新人監督が撮ったセルフ・ドキュメンタリー2本を同時期公開するという、一見リスクが高いと思われるこの企画。しかし、上映活動を通して感じたものの中に、いま「映画」に関わ…

試写室だより『信さん・炭坑町のセレナーデ』 <br>いま、平山秀幸は何を考えているか <br>若木康輔(ライター)

このサイトでは僕は、なるたけ作家論のアプローチで評を書かないようにしている。今度の映画は監督の前作、前々作やデビュー作、あるいは影響を受けた作家の作品と似ている、似ていない……と引き比べながら、書き手が知り学んできたところに感想を落ち着かせ…

『ゲゲゲの女房』<br>鈴木卓爾(監督)インタビュー

漫画家水木しげるさんの妻、武良布枝さんによる自伝的エッセイ「ゲゲゲの女房」の映画版を監督したのは、俳優としても活躍する一方、ドラマ「中学生日記」や映画『のんちゃんのり弁』(09)などの脚本を書き、『私は猫ストーカー』(09)の監督もつとめた鈴…

『堀川中立売』<br>高木風太(撮影)インタビュー

本誌430号のフィルメックス特集で取り上げた後、サイトでも柴田剛監督のインタビューや映画批評家萩野亮さんによる映画評を掲載してきた『堀川中立売』が、いよいよ11月20日からポレポレ東中野と吉祥寺バウスシアターで公開されます。 そこで今回は、同作で…

試写室だより『ベオグラード1999』<br>映芸ダイアリーズ・クロスレビュー

加瀬修一(プランナー/ライター) 初めて『ベオグラード1999』を観た時、これはナショナリズムへの拒絶反応や権力志向への嫌悪、右翼思想に対する批評的なドキュメンタリーというよりも、私小説というか映像詩というか、金子遊という1人の青年の10年間の魂…

学生による学生のための学生映画体験レポ<br>「京都造形芸術大学ケンカ腰上映会レポート」<br>斗内秀和(学生)

9月19日、20日に、京都造形芸術大学(以下、京造)で、学園祭に合わせて、京造映画学科の主催による「ケンカ腰上映会」が行われた。これは11月に開催される京造映画祭の番外編企画として、映画祭で決定される全国の学生映像作品を対象とした京造アカデミー賞…

映画芸術最新号(433号)発売!!

10月30日に「映画芸術」433号が発売となりました。 今号の巻頭は『海炭市叙景』熊切和嘉監督のインタビューです。佐藤泰志さんの原作を映画化すべく集まった函館の方々を中心に制作された本作。メインキャストにも、地元のオーディションで選ばれた方々が多…

試写室だより『堀川中立売』 <br>京都迷宮案内――デタラメなこの世界を生き抜くために <br>萩野亮(映画批評)

ほりかわなかたちうり、と読む。 舞鶴に拠点を置くシマフィルムの「京都連続」シリーズは、皮切りとなる本作に続いて『天使突抜六丁目』(山田雅史監督)も先ごろ完成を見たが、土地になじみのないひとはまず何と読めばよいかわからないこれらのタイトルは、…

金子遊のこの人に聞きたいVol.16 <br>鈴木志郎康(詩人、映像作家)インタビュー 後編 <br>「極私的映画と個人ドキュメンタリー」

言うまでもなく、鈴木志郎康は代表的な現代詩の詩人の一人であるが、同時に個人映画の作家としても知られている。NHKのプロフェッショナルなカメラマンであった60年代の前半から八ミリフィルムで個人映画を撮りはじめて、1975年に初めての16ミリフィルム…

金子遊のこの人に聞きたいVol.15 <br>鈴木志郎康(詩人、映像作家)インタビュー 前編 <br>「職業カメラマンから個人映画の世界へ」

言うまでもなく、鈴木志郎康は代表的な現代詩の詩人の一人であるが、同時に個人映画の作家としても知られている。NHKのプロフェッショナルなカメラマンであった60年代の前半から八ミリフィルムで個人映画を撮りはじめて、1975年に初めての16ミリフィルム…

試写室だより番外編『乱暴と待機』(冨永監督インタビュー付) <br>パンツのしみと板付き4ショット <br>小出豊(映画監督)

映画を見ていくつか聞きたいことがあったので、冨永監督に会ってきた。2人より、3人がいいから、冨永さんと一緒に『シャーリーの好色人生と転落人生』を作った佐藤央監督にも声をかけた。 佐藤:美波さんをキャスティングしたきっかけは? 冨永:彼女が出演…

金子遊のこの人に聞きたいVol.14 <br>飯村隆彦(映画作家)インタビュー 後編 <br>「七〇年代以降のビデオ・アートと概念芸術」

飯村隆彦はドナルド・リチー、大林宣彦、高林陽一とならび日本の実験映画の草分けである。他の三人がその後、文学研究者や劇映画の監督など、実験映像以外の道へ進んでいったのに対し、飯村隆彦は六〇年代以降もビデオ・アート、メディアアート、映像インス…

試写室だより『ロストパラダイス・イン・トーキョー』 <br>どれだけでかく飛ぼうとしたか <br>近藤典行(映画作家)

映画でしか起き得ない大きな嘘を吐くこと、現実を突き破りうる決死のジャンプを試みているかどうかは、それだけで十分その映画の評価基準となる。もちろん、そのジャンプがきれいに着地しているのに越したことはないが、それより大事なのは、どれだけでかく…

試写室だより『名前のない女たち』『nude』 <br>今夜じゅうに行ってこれる海はどこだろう <br>若木康輔(ライター)

アダルトビデオ(AV)は駅前のレンタル屋さんが数年前に閉店して以来まともに見ていないし、人気女優だったという「みひろ」の存在さえ知らなかった。そんな僕が、遠慮せずに書く。 『名前のない女たち』と『nude』。どちらもいい映画だった。 かたや…

金子遊のこの人に聞きたいVol.13 <br>飯村隆彦(映画作家)インタビュー 前編 <br>「六〇年代の実験映画とニューヨーク時代」

飯村隆彦はドナルド・リチー、大林宣彦、高林陽一とならび日本の実験映画の草分けである。他の三人がその後、文学研究者や劇映画の監督など、実験映像以外の道へ進んでいったのに対し、飯村隆彦は六〇年代以降もビデオ・アート、メディアアート、映像インス…

荒井晴彦の映画×歴史講義・第六回<br>『将軍たちの夜』(67)×ワルキューレ作戦

脚本家・荒井晴彦が映画とそこに描かれた歴史的事件について語る連載「荒井晴彦の映画×歴史講義」。本連載は日本映画学校脚本ゼミの卒業生を対象にした勉強会を採録したもので、映画『無能の人』などで知られる脚本家の丸内敏治さんがともに講師役を務めてい…

映芸シネマテークvol.8開催のお知らせ

9月6日(月) 『東京人間喜劇』 『東京人間喜劇』は、バルザックの小説を原作とする静止画アニメーション『ざくろ屋敷』(06)で注目された新鋭、深田晃司が2008年に発表したオールキャスト劇団青年団による実写作品である。三つのエピソードからなる本作は…

金子遊のこの人に聞きたい Vol.12 <br>原將人(映画作家)インタビューPART4 <br>『初国知所之天皇』

孤高の天才映画作家・原將人。彼は1968年麻布高校の在学中、16ミリ映画『おかしさに彩られた悲しみのバラード』を撮影・完成し、第1回東京フィルムフェスティバル グランプリ、ATG賞を同時受賞。新聞にも大々的に取りあげられ、自主映画・8ミリ映画ブームの…

7月30日(金)より「映画芸術」最新号発売!!

7月30日(金)より「映画芸術」の最新号(432号)が発売となります。 今号では、瀬々敬久監督が自主制作という形で撮影を始め、二年がかりで完成させた4時間半の大作『ヘヴンズ ストーリー』の監督インタビューを巻頭に据え、戦後の日本人が映画をは…

金子遊のこの人に聞きたい Vol.11 <br>原將人(映画作家)インタビューPART3 <br>『東京戦争戦後秘話』『初国知所之天皇』

孤高の天才映画作家・原將人。彼は1968年麻布高校の在学中、16ミリ映画『おかしさに彩られた悲しみのバラード』を撮影・完成し、第1回東京フィルムフェスティバル グランプリ、ATG賞を同時受賞。新聞にも大々的に取りあげられ、自主映画・8ミリ映画ブームの…

金子遊のこの人に聞きたい Vol.10 <br>原將人(映画作家)インタビュー PART2 <br>『おかしさに彩られた悲しみのバラード』『自己表出史 早川義夫編』

孤高の天才映画作家・原將人。彼は1968年麻布高校の在学中、16ミリ映画『おかしさに彩られた悲しみのバラード』を撮影・完成し、第1回東京フィルムフェスティバル グランプリ、ATG賞を同時受賞。新聞にも大々的に取りあげられ、自主映画・8ミリ映画ブームの…

金子遊のこの人に聞きたい Vol.9 <br>原將人(映画作家)インタビュー PART1 <br>少年時代~高校時代

孤高の天才映画作家・原將人。彼は1968年麻布高校の在学中、16ミリ映画『おかしさに彩られた悲しみのバラード』を撮影・完成し、第1回東京フィルムフェスティバル グランプリ、ATG賞を同時受賞。新聞にも大々的に取りあげられ、自主映画・8ミリ映画ブームの…

『結び目』 <br>小沼雄一(監督)・港岳彦(脚本)インタビュー

『童貞放浪記』の小沼雄一監督が、ピンクシナリオコンクール入選作である『イサク』(公開タイトル『獣の交わり 天使とやる』)や『ヘクトパスカル』などで頭角を現した脚本家の港岳彦さんとタッグを組んだ新作『結び目』が6月26日から公開となります。 中学…

試写室だより『ねこタクシー』 <br>猫の映画がまた公開される、NIYAGO <br>若木康輔(ライター)

映画評は、小学生の作文の積み立てかたで書ければ、実はそれが一番ではないかと思う。 今回の場合だと、こんな感じ。「『ねこタクシー』という映画を見ました。タクシーの運転手さんが猫となかよしになります。わたしは、とてもいいなーと思いました。どーし…

CO2東京上映展を前に <br>三宅唱(CO2助成監督)

大阪での上映を終えた3月中旬頃、CO2企画ディレクターの西尾さん経由で「CO2大阪上映展について書いてほしい」という依頼を受けた。僕が指名されたのはおそらく以下の経緯があったからだと思う。 大阪上映最終日の3月3日、審査員・大友良英さんらによる今回…

闘うドキュメンタリー時評Vol.5<br>座・高円寺ドキュメンタリー・フェスティバル(前編)<br>金子遊(批評家)

東京の本格的なドキュメンタリー映画祭 去る2010年3月16日から22日の7日間、東京の「座・高円寺」にて、「第1回 座・高円寺ドキュメンタリー・フェスティバル」が開催された。国内のドキュメンタリー映画、テレビ・ドキュメンタリー計29本が上映され、一般…

映画館だより<br>『アヒルの子』近藤典行(映画作家) <br>『LINE』金子遊(批評家)

『アヒルの子』 動物と映画を愛する者に悪い奴はいない 近藤典行(映画作家) 現在ポレポレ東中野で上映中の『アヒルの子』と『LINE』は「ワタシ×家族×ドキュメンタリー」というコピーが付せられ、2本同時公開中だ。2本立てではない(プログラム上も『アヒ…

『BOX 袴田事件 命とは』 <br>高橋伴明(監督)インタビュー

終戦から20年近く経ち、日本が高度経済成長の只中にあった1966年、静岡県清水市で起きた強盗殺人放火事件、いわゆる「袴田事件」とその後を描いた『BOX 袴田事件 命とは』が5月22日から全国順次公開となります。戦後の主な冤罪事件の一つと言われるこの事件…