2011-01-01から1年間の記事一覧
近年、急速に進む映画のデジタル化だが、ここへ来て一気にその問題が表面化している。というのも、作品の供給がフィルムからデジタル素材へと急変する中で、デジタルの上映設備を持たないミニシアターが存続の危機に立たされているからだ。さらに、デジタル…
ヨーロッパ映画というと、眉間に皺を寄せて鑑賞する「アート」というイメージが一般的なのかもしれないが、今回上映された作品は、そうしたイメージを破る、愉しむものとしての映画が多かったように思う。ポスターやパンフレットの表紙に使われているのも、…
第18回目も無事に終了した大阪ヨーロッパ映画祭。メインの会場となったホテルエルセラーン大阪は、白を基調とした、清楚な印象。上映が行なわれたエルセラーンホールは、木を多用した温かみのあるホールで、白とガラスによる潔癖な雰囲気のあるホテルの中に…
近年、インディペンデント映画勢の活躍が目立つ東京国際映画祭「日本映画・ある視点」部門。『ひかりのおと』はそこで注目を集めた作品の一本だ。監督自身がトマト農園を営み、生活する岡山県真庭市を舞台に撮影し、製作過程でその地の人々が多く携わり、ま…
風景映画とドキュメンタリーの臨界点 金子遊(映像作家・脚本家) トップランナーとして どのような芸術ジャンルにおいても、トップランナーと呼ばれる作家は、宿命のようなものを背負うらしい。松江哲明が著書「セルフ・ドキュメンタリー」で振り返った10年…
新作『アントキノイノチ』の公開に合わせ、11月9日にタワーレコード新宿店で瀬々敬久監督の公開インタビューを行いました。既に11月19日から全国公開されている本作は、心に傷を負った若い男女が遺品整理の職場で出会い、他者との絆、死者との繋がりに気付い…
伊月肇という、ひとつの映画の希望について。 持永昌也(ライター) 太陽の塔。それは、70年に開催された日本万国博覧会の象徴であり、現在も撤去されることなく、持て余されたかのような昭和のシンボルだ。 61年生まれであり、万博の開催時には吹田市千里丘…
2008年より開催され、今年で3回目を迎える中国インディペンデント映画祭。近年特に話題を呼んでいるワン・ビンをはじめ、フィルメックス、山形国際ドキュメンタリー映画祭などでも、何人かの監督の作品が上映され、注目を集める中国インディペンデント映画。…
かつてチャップリンはトーキーに反対し、映画は純粋に視覚的な芸術だと主張したという。このところ相次いで公開されている3D映画に対しては今のところ、映画は純粋な平面の芸術だとして反対する声は聞かれないが、それは映画の3D化が受け入れられたから…
柴田剛監督の『堀川中立売』に続いてシマフィルムが仕掛ける「京都連続」シリーズ第二弾『天使突抜六丁目』が11月19日から新宿・K's cinemaで公開される。映画は京都に実在する「天使突抜」という町をタイトルに冠しながらも、その町には実在しない「六丁目…
10月13日に閉幕した山形国際ドキュメンタリー映画祭2011では、初めての試みとして「ヤマガタ映画批評ワークショップ」が行われた。ドキュメンタリー批評に意欲のある書き手を募り、クリス・フジワラ、北小路隆志の両氏が講師を務めたこの企画。日本語と英語…
12月2日(金) ギ・あいうえおス -ずばぬけたかえうた- 毎年様々なジャンルのアーティストを一人セレクトし、“身体”をテーマに制作する愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品。これまでもダニエル・シュミット『KAZUO OHNO』(95)、園子温『うつしみ』…
9月2日に開催された映芸シネマテーク『親密さ(short version)』上映後の濱口竜介監督・映画評論家の荻野洋一さんのトークを掲載(開催時の告知)。テクストへの繊細さにおいて際立つ御二人が、言葉を交わし合う。演劇と映画、会話劇をめぐる対話から、現…
B5判、184頁、1500円 【特集 原田芳雄、追想】 鼎談:石橋蓮司×佐藤浩市×阪本順治 「その広々とした人格の間に」 インタビュー:桃井かおり 「どんなに無様なときでも生きるほうを選択させてくれた 芳雄は、そういう人魂だった」 座談会:宇崎竜童×山崎ハコ×…
(C)2011映画「アントキノイノチ」製作委員会 瀬々敬久監督の新作『アントキノイノチ』の公開(11月19日~)に合わせて、監督の公開インタビューとプレス付きのサイン会をタワーレコード新宿店で行なうことになりました。 11月9日(水)19時スタート 場所:タ…
俺は田舎生まれボーイスカウト育ち 悪そうな奴は大体ニガテ 若木康輔(ライター) 頭でこさえていない映画は、いいものだ。なにしろセリフのやりとりが絶妙で、細部のあちこちがおかしかったり、わー、キツイ、とゲッソリしたり。互いにそっぽを向いた群像劇…
前回更新してからあっと言う間に一年と半年が過ぎてしまった。その間、映画を一本作り地道な上映活動を続けてきた。ありがたいことに賞なんぞも頂き、映画祭を駆けずり、チヤホヤされる時間は増えたものの、息切れしてきたのでふと立ち止まって身辺を見渡す…
『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』(10)は、映画美学校フィクション・コース高等科のカリキュラムの一環で、講師である大工原正樹が生徒をスタッフに監督した作品である。主演は高橋洋監督『狂気の海』(06)や井土紀州監督『土竜の祭』(09)など近年…
3月11日の東日本大震災から約半年を迎えました。 現地で多種多様な問題が噴出しているなか、アーティストたちの各種の復興支援のイベントや、ボランティアが行われ、また、表現者が多様な試みをしているのは周知の通りです。 いま、福島と東京をまたにかけ、…
とある刑務所の雑居房・204房の面々は、受刑者でありながら妙に能天気に暮らしている。新入りの栗原健太だけは浮かぬ顔で、房そのものに慣れない彼には、自分を取り囲む明るい面々もどこか不気味に映じる。陽気で丸々とした通称「チャンコ」の甲高い笑い声が…
映像作家の萩原朔美は、舞台の演出家、エッセイストとしてもよく知られている。60年代後半から実験映画を撮りはじめ、70年代以降は、構造映画、映像書簡、映像エッセイなど多様な広がりをみせるスタイルで、長年にわたり日本の実験映像シーンを牽引してきた…
2010年5月より活動を開始したレーベルCALF。大山慶、和田淳、TOCHKA、水江未来といった近年評価の高まっている短編アニメーション作家、実験映像作家の作品集を国内外に向けて販売しつつ、上映イベントの企画や劇場向けの配給などもおこなっている。 今週9月…
福間健二監督は新作『わたしたちの夏』の中で、かつて日本人が直面した被爆体験を、今を生きる非当事者の視点から捉えなおそうとしています。そこで採用される手法は一筋縄ではなく、見方によっては難解な印象を受けるかもしれません。しかし前作の『岡山の…
アニメーション作家・相原信洋は、60年代にNFBC(National Film Board of Canada)のノーマン・マクラレンや、国内の個人制作する映画作家たちに影響を受け、8ミリカメラで自作の撮影をはじめました。初期は実験的な映画や、セルフドキュメント風の写真アニ…
9月2日(金) 『親密さ(short version)』 第2回で評判を呼んだ『PASSION』の濱口竜介監督を再びゲストに迎え、現在製作中の新作『親密さ(short version)』を上映する。『親密さ』は3部構成、4時間弱の長編映画として完成予定だが、その中の第2部を為す…
B5判/192頁/増頁特別定価1500円
2007年の『サッド ヴァケイション』以来、4年ぶりとなる青山真治監督の新作長篇『東京公園』が公開中だ。北九州の地で神話的世界が繰り広げられる前作に対し、東京を舞台とした今作では、カメラマン志望の大学生を中心とした人間模様がユーモアも交えて軽や…
今週末の7月23日(土)から8月5日(金)まで開催されるCO2東京上映展2011。今泉かおり監督『聴こえてる、ふりをしただけ』(選考員特別賞、女優賞を受賞) 、リム・カーワイ監督『新世界の夜明け』(観客賞受賞)のほか、特別上映作品として万田邦敏監督『面…
手描きアニメーション、実写、写真アニメーション、クレイアニメなど、様々な技術を駆使する孤高のアニメーション作家、黒坂圭太。彼の実験的なアニメーションはアヌシー、オタワなどの国際アニメーション映画祭や各種コンペティションで受賞、様々な映像祭…
乱雑にカメラが床に据えられると、その当のカメラに向かって何やら過剰な自己アピールを始める怪しげな男のすがたが大きく映し出される。夜のマンションと思しき一室の、限られた照明のなかでこちらを見据えるサングラスの男は、ひとりでにテンションを上げ…