映画芸術

脚本家荒井晴彦が編集発行人を務める季刊の映画雑誌。1月、4月、7月、10月に発行。2016年に創刊70周年を迎えました!書店、映画館、Amazon、Fujisanほかにて発売中。

2011-01-01から1年間の記事一覧

映画館だより『あぜ道のダンディ』 <br>JUST TWO OF US(『・ふ・た・り・ぼ・っ・ち・』のテーマ) <br>若木康輔(ライター)

多くの方は無私の熱意でやっていると知っている。尊重もしている。しかし、いち物書きとしては、新しい才能を大きな声で喧伝することにどうも戸惑いがある。急いで作家に仕立てられて若いうちに潰れた者を(別分野を含めて)何人か間近に見てきたせいで、慎…

試写室だより『ふゆの獣』 <br>荒涼とした風景の中で、牙のない獣たちは <br>近藤典行(映画作家)

この映画は、全編を通し、四人の登場人物によってのみ描かれている。きっかり四人だ。それ以外の人間が画面に映ることはほぼない。ユカコ(加藤めぐみ)、その同僚で彼氏でもあるシゲヒサ(佐藤博行)、同じく同僚でシゲヒサの浮気相手でもあるサエコ(前川…

『緑子/MIDORI-KO』 <br>黒坂圭太(アニメーション作家)インタビュー 前編 <br>アニメーションとの出会いと初期の作品

手描きアニメーション、実写、写真アニメーション、クレイアニメなど、様々な技術を駆使する孤高のアニメーション作家・黒坂圭太。彼の実験的なアニメーションはアヌシー、オタワなどの国際アニメーション映画祭や各種コンペティションで受賞、様々な映像祭…

試写室だより『無常素描』 <br>記録(ドキュメント)ではなく、情報(ニュース)でもない、アクチュアルな映画 <br>神田映良(映画批評)

現実を切りとる、映像という媒体。「現実」を写している面と、写す者、或いは編集者の意思によって切断しているという、この両面が、特に報道やドキュメンタリーでは常に問われる。かつてアンドレ・バザンは、『失われた大陸』の、白人の到来を待つ野蛮な首…

『まなざしの旅 土本典昭と大津幸四郎』 <br>特集上映「反権力のポジション キャメラマン大津幸四郎」 <br>大津幸四郎(キャメラマン)×鎌仲ひとみ(ドキュメンタリー監督)トーク

代島治彦監督による『まなざしの旅 土本典昭と大津幸四郎』(10)は、水俣を撮り続けたことで知られる、日本ドキュメンタリー映画の巨人・土本典昭監督へのインタビューと、土本監督や小川紳介監督などの撮影を長年つとめてきた大津幸四郎キャメラマンへのイ…

『軽蔑』 <br>廣木隆一(監督)、鍋島淳裕(撮影)、森重晃(プロデューサー)トーク

柳町光男監督『火まつり』以来、26年ぶりの中上健次原作映画となる『軽蔑』。本作はまた、『ヴァイブレータ』『やわらかい生活』以来、廣木隆一監督と森重晃プロデューサーがタッグを組んだ注目作でもあります。 和歌山県新宮市にある建築家、西村伊作の記念…

『亡命』 <br>翰光(監督)インタビュー

「亡命」という言葉を聞いて、みなさんは何を連想するでしょうか。 本作は、中国国内からアメリカ、フランス、スウェーデン、オランダへ逃れた作家、詩人、美術家など計14名の大物の亡命者へインタビューを試みています。 私たちは本当の中国の姿をどれだけ…

「ニッポンコネクション」レポート <br>参加監督が見たドイツの日本映画祭 <br>中川究矢(映像作家)

4月27日から5月1日までドイツのフランクフルトで開催された世界最大級の日本映画の祭典「ニッポンコネクション」に初参戦して来ました。 偶然にも今年の「ニッポンコネクション」(以下、ニチコネ)は監督作の『進化』の他、録音で参加した『ヘルドライバー…

『歓待』 <br>深田晃司(監督)インタビュー

映芸ダイアリーズの一員でもある深田晃司監督の新作『歓待』の東京公開が4月23日から始まりました。本作は東京国際映画祭のある視点部門で作品賞を受賞、主演女優の杉野希妃さんがプロデューサーを務めていることや、劇団「青年団」の俳優とのコラボレーショ…

映画館だより『劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ』 <br>こんな気持がわかるかい <br>若木康輔(ライター)

自分の原則として、映画評は試写で拝見したもののプレビューのみにしている。公開が始まった作品まで書いたら、歯止めが利かなくなる。僕は作文中毒者なので、なんでも好きに書いていいと言われると、ホントにサルのようにいつまでも書き続けてしまう。 その…

4月30日より「映画芸術」435号発売!

B5判/192頁/増頁特別定価1500円 【日本映画新作】 『大鹿村騒動記』 インタビュー;原田芳雄+岸部一徳 インタビュー;阪本順治 論考;新城勇美「おもしろうてやがてかなしき喜劇かな」 『マイ・バック・ページ』 座談会;絓 秀実+佐伯俊道+青木研次+稲…

『美しい術』 <br>大江崇允(監督) 土田愛恵(主演)インタビュー

6月3日(金)、映芸シネマテークvol.9上映作品が『適切な距離』(11)に決まった。2月21~27日まで開催された第7回CO2映画祭グランプリの大阪市長賞受賞作である。 監督は大江崇允。戸田彬弘(監督作『夕暮れ』[09])と二人で映画製作団体「チーズfilm」とし…

「第一回こまばアゴラ映画祭」評論ワークショップ レポート <br>皆川ちか(ライター)

さる2月22日より一週間にわたって開催された「第一回こまばアゴラ映画祭」。評論部門ワークショップに講師として参加した皆川と申します。他講師二名は、映画芸術ダイアリー執筆者である映像作家の金子遊さん、放送・構成作家の若木康輔さん。三人の中でも…

深田晃司監督『歓待』クロスレビュー <br>映芸ダイアリーズ

若木康輔(ライター) 今回は監督がその道の筋金入りとよく分かっているので、敬意を表する意味でも(具体的なストーリーなどの解析は他の人にお任せして)、作り手の特長を過去の事例に重ね合わせるシネ・クリティック対応の短評をやってみようと思う。 『…

大阪アジアン映画祭レポート 後編 <br>神田映良(映画批評)

各作品の上映後の質疑応答やセレモニーでは、当然の事ながら通訳を介してやりとりが交わされたのだが、客席では、通訳を待たずゲストの話に直接笑い声を上げる方もいて、舞台のみならず客席もまた多言語の空間となっていたようだ。何度か観客から、作品内で…

大阪アジアン映画祭レポート 前編 <br>神田映良(映画批評)

3月5日から17日に渡り開催された、大阪アジアン映画祭(以下OAFF)。第6回を迎えた今年度からはコンペティション部門が新設され、才能の発掘の場としての在り方がより高まった。複数の会場で同時並行的に開催されたOAFF。開催期間中、大阪は立体的な映画空間…

試写室だより『ショージとタカオ』 <br>映画のあらゆる場面に尊厳を探している <br>若木康輔(ライター)

3月上旬まで地方局の番組の仕事で仙台に数日いたばかりだった。11日以来なにに手をつけても落ち着かない。義援金を振込に行くぐらいしかまともな活動ができない。知人友人の家族が被災していた。おそらく少なくない数の方と同様、(とても映画どころじゃな…

映芸ダイアリーズ 2010日本映画ベストテン&ワーストテン <br>金子遊、深田晃司、加瀬修一、平澤竹識

金子遊(映像作家・脚本家) ベスト 1 ONE SHOT ONE KILL~兵士になるということ(藤本幸久) 2 キャタピラー(若松孝二) 3 BOX 袴田事件 命とは(高橋伴明) 4 三島由紀夫・赤報隊(渡辺文樹) 5 時をかける少女(谷口正晃) 6 TOYO.DISPLAY(かわな…

短期連載「大阪CO2に見るインディペンデント映画のいま」最終回 <br>上映展レポート 神田映良(映画批評)

2月26日と27日、大阪・梅田のHEP HALLで開催されたCO2(シネアスト・オーガニゼーション・大阪)は、今回で第7回を数える。両日共に、助成作品の上映に加え、トークセッションと特別招待作品の上映が行なわれ、映画を取り巻く国内外の現況が概観された。 助…

映芸ダイアリーズ 2010日本映画ベストテン&ワーストテン <br>若木康輔、近藤典行、萩野亮、千浦僚

若木康輔(ライター) ベスト 1 ノルウェイの森(トラン・アン・ユン) 2 ケンタとジュンとカヨちゃんの国(大森立嗣) 3 おとうと(山田洋次) 4 時をかける少女(谷口正晃) 5 パートナーズ(下村 優) 6 名前のない女たち(佐藤寿保) 7 堀川中立…

短期連載「大阪CO2に見るインディペンデント映画のいま」第2回 <br>助成監督5人に聞く、4ヶ月間の激走を終えて

CO2(シネアスト・オーガニゼーション・大阪エキシビション)第7回上映展が、いよいよ2月21日~27日の日程で始まる。 CO2というプロジェクトは、企画を募集、予選選考を通過した10人の監督によるプレゼンテーションを経て、5人の助成監督を決定。各監督はシ…

「第一回こまばアゴラ映画祭」とは <br>深田晃司(映画監督)・中村真生(俳優)インタビュー

京王井の頭線駒場東大前駅周辺の店を眺めていると一枚の写真が目に付く。街中に不意にあらわれた行列、そこには商店街の人たちも写り込んでいるだろう。2月22(火)~28日(月)まで開催される「第一回こまばアゴラ映画祭」のポスターである。「こまば…

『ミツバチの羽音と地球の回転』鎌仲ひとみ(監督)インタビュー

山口県上関町祝島、スェーデンを舞台にした『ミツバチの羽音と地球の回転』が、東京・渋谷ユーロスペースで2月19日から公開される。生物多様性とエネルギー問題をテーマとしたドキュメンタリー映画で、本作はこれまで、山口市をはじめとした全国各地ですでに…

短期連載「大阪CO2に見るインディペンデント映画のいま」第1回 <br>新生CO2の描く近未来ネットワーク図

CO2第7回上映展が2月21日から27日までの日程で開催される。 2005年に大阪市が提唱した映像文化振興事業としてスタートし、新人映画作家の育成と映画制作をサポートしてきたCO2(シネアスト・オーガニゼーション・大阪エキシビション)。今回より制作体制が変…

試写室だより『平成ジレンマ』 <br>「いいかげんにしてくれ」と彼は云った <br>近藤典行(映画作家)

穴があいている。そこかしこに。皆で共同生活する建物内の壁に。殴りつけられたものであろうその穴はかつてあけられたものであり、ごく最近つけられたものでもある。その、同じようで別の穴を見ることが、しいては向き合わざるをえないのが、この映画を目に…

試写室だより『ピラニア』『カレーのにおい』『イチジクコバチ』 <br>劇映画から個人映画へ <br>金子遊(映像作家・脚本家)

「青春とエッチが盛り込まれていれば、何を撮ってもOK」というルールの下で、古澤健、いまおかしんじ、井土紀州ら多彩な作家が新作を発表し、1週間から10日という短い期間ながらもポレポレ東中野にて劇場公開されているのが青春Hシリーズである。2010年か…

「映画芸術」最新号(434号)発売!!

【2010年 日本映画 ベストテン&ワーストテン】 相田冬二(ノベライザー) アレックス・ツァールテン(映画研究者) 井川耕一郎(映画監督・脚本家) 伊藤 雄(湯布院映画祭実行委員会) 内田 眞(編集者) 大口和久(批評家・映画作家) 岡本安正(会社員)…

『kocorono』川口潤(監督)インタビュー

ハードコアバンド、ブラッドサースティ・ブッチャーズ(bloodthirsty butchers)の現在を追うドキュメンタリー『kocorono』は、結成から23年を迎えて閉塞状態に陥ったバンドの葛藤を赤裸々に描出していきます。長い時間を共有しているがゆえに起こるコミュニ…

『毎日かあさん』<br>小林聖太郎(監督)インタビュー

アルコール依存症の夫と子供たちに振り回されながら、プロの漫画家として、また普通の母親として力強く生きる日々を描いた西原理恵子さんの傑作漫画「毎日かあさん」。その映画化に挑んだのは、前作『かぞくのひけつ』で2006年度映画監督協会新人賞を受賞し…

2010年日本映画ベストテン&ワーストテン

「映画芸術」誌の2010年日本映画ベストテン&ワーストテンが決定しましたので、ご報告いたします。配点の詳細および選評については1月30日発売の本誌434号に掲載されます。本年も「映画芸術」をどうぞよろしくお願いいたします。 ベストテン 1 ヘ…