映画芸術

脚本家荒井晴彦が編集発行人を務める季刊の映画雑誌。1月、4月、7月、10月に発行。2016年に創刊70周年を迎えました!書店、映画館、Amazon、Fujisanほかにて発売中。

2008-09-01から1ヶ月間の記事一覧

『ブリュレ』<br>林田賢太(監督)・早坂 伸(撮影)インタビュー

10月25日から渋谷ユーロスペースでレイト公開される『ブリュレ』は、連続放火事件をきっかけに再会した双子の姉妹が日本を縦断して逃避行を続けながら互いを求め合おうとする、愛についての物語です。そしてこの映画は、自主制作ながらも全国各地でのロケを…

試写室だより『フツーの仕事がしたい』<br>反=フツーの場所からの報告<br>CHIN-GO!(映画感想家)

必見、だと思った。現代の労働状況は、このドキュメンタリーが提示することごとに無関心ではいられないひとびとを数多くつくっているようだ。 いま、「蟹工船」とかプロレタリアート文学がワーキングプア文学と呼び替えられて再読再評価されているそうだが、…

試写室だより『コドモのコドモ』 <br>みんな「コドモのコドモ」なのだから。 <br>加瀬修一(ライター)

『コドモのコドモ』は、子供が本来持っている「生きる力」をもう一度見直し、真摯に命と向き合おうとする。とても誠実な作品だ。制作者は「小学生が出産する」というショッキングで露悪趣味になりかねない題材を、寓話として描こうと試みている。 しかし観終…

『幸福 Shiawase』<br>小林政広監督インタビュー

昨年、『愛の予感』でロカルノ映画祭グランプリを受賞した小林政広監督の『幸福 Shiawase』(06)が明日、9月20日からシネマート六本木にて公開されます。本作は、北国のロケーションやミニマムな人物配置というこれまでの作風を踏襲しながら、白夜の町という…

試写室だより『幸福 Shiawase』 <br>映画の余白を埋めるもの <br>深田晃司(映画監督)

小林政広監督の『幸福』は、誰かを愛することはそれ以外の誰かを不可避的に不幸にする世界の無常を、ややセンチメンタルではあるものの、しかしこれ以上ないぐらいの簡潔さで提示して見せた映画である。 北海道の片田舎の町にスポーツバッグひとつで降り立っ…

脱映画批評『消えたフェルメールを探して』 <br>フェルメールと〈創造〉の断片の彼方へ <br>髙尾すずこ(編集者)

「合奏」という出発点 左手前にはペルシャ絨毯がかかったオーク材のテーブル、白と黒の幾何学模様の床には、均整と調和の象徴である弦楽器がある。絵の奥の壁近くでは、チェンバロを弾く女性と、譜面を手にして歌う女性にはさまれて、こちらに背を向けた男性…

試写室だより『青空ポンチ』 <br>バカにつける爆薬 <br>近藤典行(映画作家)

真っ暗な画面から馴れ馴れしいオバちゃんの話しかける声が聞こえてくる。「帰ってきたんかぁ、カツオちゃん。ほんで東京どうやったん?ええもんやるわ、ゼリーや。持っていきまい」。次の瞬間、主人公・カツオ(石田真人)が姿を現し、ゆっくりと歩き出すと…

『東南角部屋二階の女』<br>池田千尋(監督)インタビュー

日本初の国立映画大学院として設立された東京芸術大学の映像研究科。映画芸術DIARYでは昨年5月、同科の一期生が修了作品展を開いた際に、監督領域、脚本領域、製作領域の3名にお話を伺いましたが、その時、インタビューに応じてくれた大石三知子さん(脚本領…

試写室だより『イントゥ・ザ・ワイルド』 <br>いつどこでいくつになっても、〈荒野〉を目指せ。 <br>加瀬修一(ライター)

1992年の春、クリス・マッカンドレスはアラスカの荒野へ分け入った。そこで見つけた奇妙なバス。彼はここを拠点に「何ものにも縛られない完全な自由」を目指す。アラスカの大地は、どう彼の魂を解放したのか。 原作『荒野へ』は、登山家でジャーナリストのジ…

荒井晴彦の映画×歴史講義 第一回<br>『日曜日には鼠を殺せ』(64)

今は亡き今村昌平監督が設立した日本映画学校では、脚本コースの卒業生を対象にした勉強会が毎月開かれています。講師を務めるのは「映画芸術」の発行人である荒井晴彦と、『無能の人』(91)や『地雷を踏んだらサヨウナラ』(99)などで知られる脚本家・丸…