2008-01-01から1年間の記事一覧
実在の女子バスケット・チームであるJALラビッツに、ひょんなことからバスケット未経験の新人CAが入部したら……というコメディタッチの青春スポーツ映画である。 ウサギさん絡みのタイトルでもあるし、新作情報をタッタカ処理したい人たちのためにタッタ…
監視映画の歴史 「監視映画」の歴史は、映画史とほぼ同時に幕を開けたといっていい。世界初の実写映画といわれるリュミエール兄弟の『工場の出口』(1895)は、リヨン近郊の建物から一日の労働を終えた人々が出てくる姿をとらえた、50秒ほどの映画であった。こ…
某月某日、僕は『ドーン・オブ・ザ・デッド』(監督ザック・スナイダー 脚本ジェームズ・ガン/04年)を上映している映画館の前にいた。珍しくひとりではなかった。なぜなら、デート数回目の女性とともに来ていたから。でも、なんでゾンビ!? いや、映画勘…
部屋の中を横滑りしていく一枚の新聞紙を目で追うことから、『トウキョウソナタ』は始まる。後に、窓が開きっ放しになっていたため、嵐が巻き起こす強い雨と風が吹き込んできたことが判るのだが、しかしどう見てもこの新聞紙の動きは、風の力によって吹き飛…
6月9日に行われた「映芸マンスリーVOL14」のトークショーには、『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』の若松孝二監督が登場。革命を目指した若者たちが「あさま山荘事件」を起こしてしまうまでの道のりをドキュメントタッチで描き出した本作は、東京国際映…
プロ野球は負けても次の試合があり、次のシーズンがある。だが、高校野球に次はない。その一回性ゆえにマスコミもドラマを盛り上げるし、世間一般でも夏の風物詩として広く認知されている。高校球児の溌剌とした姿に胸躍らされ、自身のもう戻らない時を懐か…
こんにちは、はじめまして、本誌スタッフです。 今回リニューアルという名目で、かなり好き勝手に編集をさせていただきました。 映画は本当に懐の深い、恐ろしいものだと痛感しています。 気持ちばかりが先行し、至らない部分は多々あると思います。 それで…
最近は、見終わった後にどんな感想を言ってほしいのか、ちらしやポスターを眺めればもうイヤでも分かる、不自由な印象のものが「ドキュメンタリー映画」として劇場公開されることが増えた。『アメリカばんざい crazy as usual』も、そういう傾向の一本と言っ…
住宅街のありふれた公園に、白い紐が揺れている。それは大縄飛びの紐で、両端には小学生の女の子ふたり。一人は片足不随で松葉杖、もう一方は病弱そうに見える。つまり、彼女らは半ば強制的に「飛ぶ人」ではなく「回す人」にクラス会議で割り振られ、放課後…
これだけたくさんの映画が次々と公開される状況のなかにあって、情報量の少ないインディペンデント系の作品は、たとえそれが優れたものであってもうっかり見過ごされてしまいます。そんな状況にささやかながらも抵抗を試みようと始まったのが「映画芸術」が…
雑誌「映画芸術」には、日本映画のエログロやバイオレンスの存在意義を積極的に擁護してきた歴史がある。僕よりよくご存じの方も多いだろう。オルタネイティヴな表現や作家を色メガネ抜きで評価する姿勢は今も自然と受け継がれているから、大量の血しぶきが…
山形ドキュメンタリー映画祭のアジア千波万波部門で市民賞と奨励賞をW受賞し、毎日映画コンクールではドキュメンタリー映画賞を受賞するなど、公開前から話題となっていた『バックドロップ クルディスタン』がいよいよ今日からポレポレ東中野にて公開されて…
前作『机のなかみ』が好評だった、吉田恵輔監督の新作『純喫茶 磯辺』は、さえない親父・磯辺裕次郎と年頃の娘・咲子、そこに現れる何を考えているのかわからない美女・素子を軸に、正体不明の人間たちが集う喫茶店で繰り広げられる、可笑しくて優しいひと夏…
『女優霊』(96)や『リング』(98)の脚本家として、『呪怨』シリーズ(00~03)の監修としてJホラーブームを牽引する一方で、『蛇の道』(98)や『発狂する唇』(00)などの野心作を手がけ、2004年にはホラー番長シリーズの一篇『ソドムの市』を監督した高…
老いた映画人とは妙に魅力的な被写体で、かつて独特のプロフェッショナルとして時代の先端にいた彼らは、いまや老ライオンのような風格で遠くを見やっている――みたいな印象がある。そのようなひとびとと出会った場合、僕としては複雑な心境になる。世が世な…
カインの印 旧約聖書の『創世記』によると、神はこの世で最初の殺人者となったカインを追放する前に、彼の身体に印を刻みつけたという。このカインの印(The Mark of Cain)をつけて歩く者は、永久に犯罪者と社会的な落伍者のレッテルを背負って生きなくては…
大阪芸大の卒業制作として監督した『剥き出しにっぽん』(05)がぴあフィルムフェスティバルのPFFアワード2007でグランプリを受賞、さらに今年の香港映画祭で開催されたアジア・フィルム・アワードでは「エドワード・ヤン記念」アジア新人監督大賞を手にした…
カフェブームと言われて久しい。個性的な癒しの空間や新しいライフスタイルが提案され続け、コーヒーは最も身近な飲み物となった。しかし1杯のコーヒーがどういう成り立ちで目の前にあるのかを知る人は少ないのではないだろうか。
脚本家として、また助監督として往年の若松プロダクションを支えた後、テレビアニメ「まんが日本昔ばなし」のメインライターを務め、約1400本の脚本を担当したという経歴を持つ沖島勲監督。『ニュー・ジャック・アンド・ヴェティ』(69)、『出張』(89)、…
スティーヴン・ミルハウザーの短編小説を映画化し、全米でインディペンデント系としては予想外のロングランヒットを遂げた作品。 19世紀末のウィーンで、奇術師アイゼンハイム(エドワード・ノートン)は超絶的なテクニックによるイリュージョンで観衆の注…
みなさんは学生が撮った映画をご覧になったことがありますか。技術的にも内容的にも拙いものばかりだろうと決めつけてはいないでしょうか。たしかにそうした作品が大半かもしれません。しかし、一般映画以上におもしろい学生映画というものがたしかに存在し…
クリスマスイブにオフィスで残業をしていたアンジェラ(レイチェル・ニコルズ)は仕事を終えて地下2階の駐車場(P2)へ行くが、車のエンジンがかからない。 車は動かず、アンジェラは地下1階へ行ってタクシーを呼ぶが、タクシーが到着しても出入り口がロ…
今年の映画監督協会新人賞を受賞した横浜聡子監督の『ジャーマン+雨』、香港映画祭のアジア・フィルム・アワードで「エドワード・ヤン記念」アジア新人監督大賞を受賞した石井裕也監督の『ガール・スパークス』と、話題作を続々と世に送り出しているのがシ…
映画芸術本誌の最新号(423号)が発売されました。 主な内容は以下の通りです。 【巻頭グラビア】西島秀俊+川島小鳥【対談】『休暇』西島秀俊+佐向大『靖国』李纓+鈴木邦男「2008年上半期の日本映画をめぐって」寺脇研+荒井晴彦【インタビュー】『パーク…
5月9日から風琴工房による水俣病事件をテーマにした『hg』が上演される。『hg』とは、水俣病を引き起こした水銀の化学記号だ。舞台となる水俣を訪問した詩森ろばさん(作・演出)は、母親の胎内で水銀の影響を受けて生れた胎児性水俣病患者の作業所「ほっと…
おかげさまで映画芸術が主催する上映会「映芸マンスリー」も一周年を迎えました。動員は伸び悩んでおりますが、前向きに頑張っていきたいと思いますので、今後とも宜しくお願いします! 2年目の第一弾となる5月は香港映画祭のアジア・フィルム・アワードで…
ジャック・リヴェット監督の最新作『ランジェ公爵夫人』は、映画ファンとバルザックファンを兼任する者たちを、長らく待ちわびた恋人に出会えたような気分に浸らせてくれるのではないだろうか。ようやく、バルザックの文学世界が、確かなる映画的感性のもと…
「それぞれの愛の形、それが異性であれ同性であれ物であれ、愛してしまえばそこからラブストーリーが始まると思うんですよ」は松井良彦監督の言葉。『追悼のざわめき』から22年……松井監督の第四作目となる新作『どこに行くの?』。そこに描かれていたのは、…
受験アドバイザーとしても知られる精神科医の和田秀樹氏が、「映画を撮りたい」という高校時代からの夢を実現したのが『受験のシンデレラ』です。この作品はその清清しさが多くの観客の支持を得て、2007モナコ国際映画祭で最優秀作品賞・最優秀主演男優…
「ガンダーラ映画祭」や「背徳映画祭」など、最近はインディーズ映画の特集上映が盛んに行われ、そうしたイベントの中から傑出した作品が出てくることもしばしばです。今回取り上げる「桃まつりpresents真夜中の宴」は、そもそも映画美学校の同期だった女性…