タナダユキ監督作品『赤い文化住宅の初子』のスピンオフ作品である本作は、主演・東亜優の上京から、主演映画出演までが描かれる。
映画の中で映画が作られていて、ドキュメンタリーのようでそうではない、不思議なリアリズムに包まれている。
16歳。少女と呼ぶには大人びていて、女性と呼ぶにはまだ早い。可愛らしさと美しさの狭間で迷っているような、そんな印象、そんな年齢だ。
ふんわりとした映像の中に閉じ込められた16歳の等身大の存在感は、はかなく、さりげなく、それでいて地にしっかりと踏ん張っているような健気さを醸し出している。そのせいだろうか、作中で描かれる撮影のシーンでの彼女の演技よりも、本作における演技のほうが自然で、引き込まれた。
印象的だったカットは、上京する娘を見送る父親の、タバコを持った手のアップ。「男の人のどんなとこが気になるか」と問われ、「手」と答える16歳の憧憬のような想いに、ふと自分の16歳を思い出した。
色々と考え、時には思い悩んだりもしていたはずなのに、当時の自分が何を考えていたのか、何を思って、何が好きで、どんな風に過ごしていたのか、明確には思い出せない。
だからか、本作を、アルバムをめくるような気持ちで観てしまった。
text by 新城勇美(学生)
(c)2007 トライネットエンタテインメント/ビクターエンタテインメント/スローラーナー
16[jyu-roku]
脚本+編集+監督:奥原浩志
製作:トライネットエンタテインメント/ビクターエンタテインメント/スローラーナー
公式ウェブサイト http://16-movie.com/
5月26日(土)より、渋谷シネ・ラ・セットにてロードショー