映画芸術

脚本家荒井晴彦が編集発行人を務める季刊の映画雑誌。1月、4月、7月、10月に発行。2016年に創刊70周年を迎えました!書店、映画館、Amazon、Fujisanほかにて発売中。

■試写室だより『カーネーション/ROCK LOVE』<br>結成24年のバンドに見る、生き様としてのロック

 カーネーションのライブツアーを追ったドキュメンタリー映画だが、それだけではない「日本でロックバンドを長年にわたって続けるとはどういうことか?」という矜持が詰まった映画に仕上がっている。監督は、同じくバンドのドキュメンタリー映画で、東京スカパラダイスオーケストラを追った「SMILE~人が人を愛する旅」で高い評価を得た牧野耕一。 カーネーションve場面写1.jpg  カーネーションは結成24年のロックバンドで、初期のXTCのような音楽性の頃から聴いているが、今や骨太なロックを演奏するバンドになっていて凡百のロックバンドとはまるで違う、本当のソウルを持ったロックバンドになっている。青を基調とした映像で描く各メンバーの心象風景と、赤を基調とした映像で描くライブ映像の対比も見事だ。収録されたライブは2006年7月27日の渋谷クラブクアトロのライブなどだが、タイトルにもなっている2006年12月9日にSHIBUYA-AXで行われた「ROCK LOVE」のライブが圧巻。カーネーションの3人のメンバーに加えて、西池崇(G、fromセロファンタマコウォルズ)、長見順(G)、渡辺シュンスケ(Pf 、from Cafelon) ロベルト小山(Saxphone, Flute from THE THRILL)平田直樹(Trumpet from THE THRILL)、小泉邦男(Trombone from THE THRILL)、鈴木桃子(cho)、武田カオリ(cho from TICA)、山本ムーグ(DJ from Buffalo Daughter)の豪華ゲストが参加しているのだ。伝説的なボブ・ディランのローリング・サンダー・レビュー・ツアーのようだ。ロックをやる喜びに溢れた様子が映像からも存分に伝わってくる。 カーネーションR画メイン写.jpg   カーネーションのドラムの矢部浩志のソロプロジェクトの「musement」の今年出た1stアルバムにコーラスで参加させてもらったことがあるが、カーネーションとは全く違う音楽性で(だからこそ、ソロでやる価値がある)、思う存分にヴァリエーションの多い楽曲を、さまざまなゲストで作っていることからも、音楽への深い愛情と共に楽しんで作っていることが感じられた。カーネーションの中心人物の直枝政広の初の著書「宇宙の柳、たましいの下着」も公開に合わせて発売される。「レコードジャンキーである直枝政広が自身でセレクトしたロックを中心とした名盤、貴重盤100枚+αについてとことん語り尽くし書き尽くす。カーネーションの音楽にとどまらず、現在において聴かれるべきロック、音楽を聴くことの楽しみをより深く知るための必読書」とのことで、こちらもとても楽しみだ。  生き様としてのロックを感じる秀逸なドキュメンタリー映画なので、是非観てほしい。 text by わたなべりんたろう カーネーション/ROCK LOVE』 監督:牧野耕一 出演:直枝政広、大田譲、矢部浩志、他 音楽:カーネーション 公式サイト:http://columbia.jp/rocklove 〈上映情報〉 吉祥寺バウスシアター 11月24日~12日7日 21時より 名古屋シネテーク 12月12日~18日 レイトショー