映画芸術

脚本家荒井晴彦が編集発行人を務める季刊の映画雑誌。1月、4月、7月、10月に発行。2016年に創刊70周年を迎えました!書店、映画館、Amazon、Fujisanほかにて発売中。

速報「韓国インディペンデント映画2007」<br>8月31日まで開催中

作品レポート/Aプログラム

『終わらせよう!』監督:ファン・チョルミン

text by CHIN-GO!(映画中毒)

 韓国インディペンデント映画祭2005でも『スパイするカメラ』という作品が上映され、監督も来日していて、パネルディスカッションなどがあり、そこでファン監督は、密室劇的で低予算、ふつうのドラマとはちょっとちがうつくりだった『スパイするカメラ』の次回作は、もっと予算のある一般的な映画に似たものになるでしょう、というようなことを言っていたので、てっきりこれがそれかと思っていたのだが、いやー、低予算のインディー映画でした。予算も前作より少なかったと、今回のパネルディスカッションや上映前後の質疑応答で言ってた。

 自殺サイトで集った三人の旅。女ひとり男ふたりの映画神話的三人、しかしエロスなし、タナトスの殻をかぶった生きあぐねトリオ(ポルノ的な期待とは別に、いや、それもあったかもしれないが、僕は彼らが肉体関係を結ぶなどして、そのことで生きなおしはじめるという展開を想像した。そこに存在していることをほとんど信じそうになるキャラクターたちの魂の平安のためにそう祈った)。『スパイするカメラ』は厳格に振り付けられ区切られた密室劇からラスト一転して屋外へ出てビックリするほどの瑞々しさを感じさせたが、そのロードムービー展開が別作品として継続したかの感があるのが今作『終わらせよう!』。

 

 普通の意味でいうシナリオもなかったとのこと、いいかげんというか、自由というか、とにかくそういったことが可能なのがインディペンデントの映画作りだ。登場人物らがまったく自分語りをせず、彼らの自殺志願の動機は、映画の中のいま現在のそれぞれの行動やたたずまいから観客が推測するしかないというところが親切な白痴的娯楽と今作を分かつ点であり、監督のねらいが政治的社会的題材でもあったということが非常におもしろいと思う。ネット文化の秀逸な発明のひとつ、自殺サイトを題材にした映画の最重要ポイント、彼らはやるのか、やらないのか、死に逃げ込むのか、生に復帰するのか、それはぜひ劇場で確かめてほしい。

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『終わらせよう!』上映日程

8月30日(木)19:15~

8月31日(金)19:15~

シアター・イメージフォーラムにて

詳細は「韓国インディペンデント映画2007」公式サイトへ

http://www.imageforum.co.jp/kankoku/indi2007/index.html