映画芸術

脚本家荒井晴彦が編集発行人を務める季刊の映画雑誌。1月、4月、7月、10月に発行。2016年に創刊70周年を迎えました!書店、映画館、Amazon、Fujisanほかにて発売中。

「デジタル化による日本における映画文化のミライについて」PART2 <br>ヨーロッパにおけるVPF問題の事例報告 <br>工藤雅子

 シンポジウム「デジタル化による日本における映画文化のミライについて」の採録第2回は、工藤雅子さんによるヨーロッパの現状報告。世界で同時進行している映画館のデジタル化とそれに伴うVPF問題を、ヨーロッパ諸国はどのように受け止め、どのような方策を採ってきたのか。具体的な事例が多数紹介された。 (取材・構成:中山洋孝 平澤竹識 協力:シネレボ!) kudo.JPG ヨーロッパにおけるデジタル化の現状 土肥 ありがとうございました。今の田井さんの話に、みんな言葉を失ってしまったのではないかと思います。では、次に海外に目を移し、工藤雅子さんからヨーロッパでのVPF問題、そして海外はどのようにしてそれに対応していったのかということを報告していただきたいと思います。 工藤 工藤と申します。今回、コミュニティシネマセンターさんからのご依頼で、ヨーロッパの事例について少し調査をさせていただきました。最初にお伝えしなければいけないのが、私はデジタルの専門家ではありません。ヨーロッパシネマという組織とたまたま親交がありましたので、そこから入手することのできた情報を中心に説明をさせていただきます。実は33枚くらいのチャートがあるんですが、全部細かく話していくと1時間以上かかってしまいますので、細かいところは割愛させていただいて、ヨーロッパの全体像を掴んでいただくことを目的にご説明させていただきます。 1124プレゼン資料2.jpg  まずは、現在の世界のデジタル化の状況ですけれども、全世界としては約40%、ヨーロッパにおいては30%のデジタル化が終わっていると。さらに、ヨーロッパは来年には50%に達するという予測が出ております。 著作権上の問題で資料は表示できません  こちらのチャートがヨーロッパにおけるデジタルスクリーン数の変遷を表してる資料になります。明らかなのは、ここ三年で急速にデジタル化が進んでいるという状況です。現在は1万6千スクリーンがデジタル化していると。 著作権上の問題で資料は表示できません  こちらは国別のデジタル化の状況です。下のグレーの部分がデジタル、上のブルーの部分が35ミリになっています。国ごとにばらつきがあるんですが、例えばフランス、イギリスにおいては、既に35ミリよりもデジタルの数のほうが多いという状況になっています。 著作権上の問題で資料は表示できません  こちらが、地図にデジタル化率の色をつけた資料になります。こちらのほうが一つ前に見ていただいたものよりも古い資料になります。2011年3月までの状況です。先ほどのグラフは9月が終了するぐらいまでのデータになりますので、半年間でもかなり状況が変わっていると。例えばフランスで見ると、この表では薄いグレーになってますので、30~40%という数字が出ていますが、現在は60%を超えているという報告がありました。西ヨーロッパに関してはかなりデジタル化が進んでる一方で、東ヨーロッパに関しては20%に到達していない国も多いという状況です。 1124プレゼン資料34.jpg  この表は少し古い資料になりまして、上が2000年のデータ、下が2005年のデータになります。左側から、撮影、SFX、編集、カラーグレーディング、上映、それぞれのプロセスにおけるデジタル化率が表されています。これはヨーロッパシネマから貰った資料なんですが、ヨーロッパだけのデータなのか、世界全体のデータなのか、聞いたんですけれども分かりませんでした。主にSFXと編集からデジタル化が進行してきて、2005年に至りますと、たった5年なんですけれども、SFXと編集に関してはほぼ100%になっているという状況です。撮影においても、その後のカラーグレーディングに関しても、非常にデジタル化が進んでいると。上映だけが非常にゆっくりした伸び率で、川上側からデジタル化の波が激しく襲ってきてるというのが現実だと思います。 1124プレゼン資料35.jpg  ここでヨーロッパシネマという組織に関してご説明したいんですけど、ヨーロッパにある60カ国、600都市、1千館以上、2千スクリーンを超える劇場をネットワークしている組織になります。こちらはEUの下部組織になるんですけど、映像関係を司るMEDIAという組織と、フランスの国立映画センター(CNC)からの助成金を受けてスタートしております。活動内容としては、ヨーロッパ映画の振興、若い観客の育成、デジタル化問題に対応するためのネットワークとして活動している、助成金もいくつか出してる組織です。来年で設立20年を迎えるということで、ヨーロッパシネマに聞いたところ、デジタル化問題についてはここ10年間ずっと議論してきていると言っていました。 1124プレゼン資料6.jpg  こちらはですね、各国のデジタル化率を棒グラフで示したものになります。赤い色がヨーロッパシネマ会員の映画館のデジタル化率、ブルーがそれぞれの国の映画館のデジタル化率を表しています。国によってはヨーロッパシネマの会員のデジタル化率が速く進んでいる国もありますし、逆に会員のデジタル化率が遅い国もある状況ですが、全体としては会員劇場の30%がデジタル化を終えています。  かつ、会員の映画館815館について、VPFを使ってデジタル化が可能な収支構造を持ってるところは半分ぐらいだそうです。残りの400館に関してはVPFを使ってデジタル化することができないので、ヨーロッパシネマとしてはデジタル化するために何をしていけばいいのかというのが、議論になっている状況です。  そういった取り残しの劇場を作らないために、ヨーロッパシネマとしてはEU議会に対してロビー活動を行なっております。今年6月に代表のクロードエリック・ポアロさんがEU議会に出向いて、デジタル化問題についてお話したレポートを元にこれから説明させていただくんですけど、まず、デジタル化は必要なのだということがあります。二つ目として、これは急いでやらなければいけない緊急の問題であると。三つ目として、会員劇場の半分はVPFが使えるんですが、残りの半分はVPFを使えない、デジタル化に際して劇場間の不平等性があるという指摘があります。四つ目として、デジタル化は非常に悪者のように言われる面があるんですが、必ずしもそうではないと。デジタル化によるメリットも十分あるから、デジタル化を推し進めましょうというのが、彼の提言の内容になっています。 デジタル化に関する四つのポイント 1124プレゼン資料8.jpg  ひとつずつ見ていきたいと思います。まず、デジタル化の必要性については、さっき田井さんからお話がありましたように、ひとつのプリントを三巡、四巡しながら地方の小さい劇場に回していくと、プリントは傷だらけになってしまいます。非常にクオリティの低いプリントで上映せざるをえない。しかし、デジタル素材は劣化が少ないので、デジタル上映することで劣化は避けることができます。  それから、新しい技術にヨーロッパの作家も挑戦を始めています。『アバター』以降、アート映画の範疇に入るようなヨーロッパの作家、ヴェンダースヘルツォークも3D映画に取り組むようになりました。そのため、3Dを上映できる設備を持たないと、アート映画館が立ち行かなくなってくるような時代に入ってきてるという状況があると思います。  また、将来的には素材を劇場に配信していくことになっていますので、プリントを保管するスペースやプリントを運ぶ作業がいらなくなりますし、サーバーにデータを入れてしまえば、プリントのリールを繋いだり外したりという上映時の手間もかからなくなります。  さらに、サーバーにデータを何種類も保存することが可能ですので、1日に三種類、四種類の映画を掛けたり、毎日違うプログラムで上映したりできるようになります。プログラムの柔軟性が非常に高まってくると。かつ、映画に限定しないコンテンツ、オペラとかバレエとかライブ中継、こういったものがデジタルによって可能になってきます。お客様のニーズに応えていくためにも、デジタル化はやっていかなきゃいけない問題だという認識だそうです。 1124プレゼン資料10.jpg  二つ目にデジタル化の緊急性ということがあります。こちらを先に見ていただきたいんですけども、IHSスクリーン・ダイジェストという組織が予測を出しておりまして、アメリカでは2013年、西ヨーロッパでは2014年、世界的に見れば2015年にはほとんどプリントがなくなる時代がやってくるだろうと。つまり今から三年後には、特に新作に関してはプリントがなくなってしまいます。こういう状況にあることから、デジタル化を急がなければならないということです。 1124プレゼン資料9.jpg  デジタル化を急ぐ背景の一つとして、アメリカの配給会社がデジタル上映を強く推進しているという状況がありまして、なぜかと言うと、プリントにかかっていたコストが1/5から1/10に軽減されていくと。先ほどお話したように、制作側もデジタル化を望んでいるので、劇場側が急いでデジタル化をしていかないと、主流はどんどん35ミリでの制作をやめてしまう、映画館に掛けるものがない、という状況に追い込まれてしまうと。「待ったなしの状況です」ということをポアロさんは主張しています。 1124プレゼン資料11.jpg  三つ目のポイントである不平等性についてなんですけれども、デジタルの世界では「ムーアの法則」というのがよく言われてまして、これはコンピューターの能力が2年で2倍になれば、コストは半分になるという考え方だそうです。しかしながら、デジタル上映機器については、参入業者が少ないこともあって、ムーアの法則の適用は難しいだろうとヨーロッパシネマでは考えているそうです。つまり、待っていれば価格が下がるという状況ではない。にもかかわらず、周りでは35ミリがどんどん消えているというのが今の状況です。  デジタル機材の価格ですけれども、ヨーロッパシネマは4万~7万ユーロぐらいということで、800万円くらいの金額になっています。さらに3Dを付けた場合には1万ユーロ、ざっくりですけど100万円くらいプラスになるそうです。日本では先ほどもお話が出ましたけど、1千万円くらいの導入資金が必要だと言われています。  資金はどうするかと言うと、シネコンについては先ほどからお話が出ているVPFを使ってデジタルの導入が進んでいると。独立系の映画館に関してはVPFを使うことができない、なのでどうしているかと言うと、ヨーロッパにおいては主に政府、地域、自治体の支援スキームを活用していると。一部の劇場に関しては、VPFを採用できるだけの体力がある。例えば、さっきお話しましたが、ヨーロッパシネマの会員でも半分はVPFを利用できる収支構造になっていると。自己資金、自己調達ですね、借り入れですとか、留保していた利益の中から設備投資をしていくということが一つあります。さらに、スポンサーをつけて資金調達をしたり、あらゆる手段を使って、デジタル化の資金を作ろうとしています。 1124プレゼン資料12.jpg  ただ、小さな市場ではVPFを使えないので、国の助成金やヨーロッパ全体の助成金を活用しなければならない、「私たちを助けてください」というのが、EUの議会でポワロさんがお話をされてるポイントになってくるかと思います。この主張の根幹には、地域で映画館が行なっている文化的・社会的貢献を守りましょうということがあります。 1124プレゼン資料13.jpg  いろんな国でそれぞれの助成の仕組みがありまして、後ほど具体的な例として、フランス、イギリス、ドイツ、スウェーデンの例をご説明しますけれども、これとはまた別にヨーロッパシネマ自体も多少の助成金を出していますし、ヨーロッパシネマの上部組織であるMEDIAにも助成金の仕組みが多少あります。これは国を越えて受けることのできる助成金です。その下の三つに関しては、私も知識がありませんので、こういった助成の仕組みが複数存在するというご説明に留めさせていただきます。 1124プレゼン資料14.jpg  最後に、四つ目のデジタル化のメリットについてなんですけれども、地方の小さい劇場でも早いタイミングで新作を上映できますし、新しいお客さんの掘り起こしにも繋がる。ポワロさんは、ヨーロッパ映画を守っていくうえでも、デジタル化は避けて通れないというお話をされています。まあ、デジタル化は必ずしも悪者ではないということですね。 1124プレゼン資料15.jpg  6月にポアロさんがお話をされた後、それだけが原因ではないと思いますけども、今年の11月にEU議会でここに書かれている決議が行なわれています。506票の賛成票に基づいて、EU議会は助成金の追加支援を決めたという成果を勝ち取られました。  ここで、単に映画館を守るだけではなくて、今までに作られてきたヨーロッパの映画遺産ですね、これを今後どうやって保存するのか、あるいはどうやって上映するのかということに関しても、大きな問題があるということで、決議のときにはこの点にも触れられております。今日は時間がないので、このポイントに関してはお話できないんですが、既存の劇場を、多様な作品の上映機会を守っていくと同時に、過去の作品をどうするのかということが大きな問題点になっています。  これは私も今回初めて知ったんですが、ヨーロッパではいわゆるシネコンと呼ばれる映画館の占有率が35%くらいで、64%は少数スクリーン、これはたぶん5スクリーン以下、主に1~3スクリーンくらいの劇場を指していると思うんですけど、こういった独立系の小さい映画館が半分以上を占めているというのがヨーロッパのマーケットの特徴です。こういうスクリーン数の少ない映画館に関しては、VPFは費用対効果的に見合わないという問題がありまして、このままではこういった映画館が全部消えてってしまうというのが、ヨーロッパの大きな問題になっています。EUレベル、国家レベル、あるいはその地域レベルで様々なサポートを使わなければいけないんですが、国ごとに取っている政策はバラバラという状況になってます。 デジタル化に対するヨーロッパ各国の取り組み 1124プレゼン資料17.jpg  フランスは現在60%がデジタル化していますが、大手に関しては投資の75%はVPFを使って回収しましょうと。VPFに参加できない劇場は、先ほどお話しましたCNCという国立の映画センターからお金を借りて、そこからVPFに相当する、配給会社が払う補助金をCNCに返すという形で、デジタルを導入しようという形です。国の助成と既存のVPFの仕組みを組み合わせたような方法論をとっています。 1124プレゼン資料33.jpg  イギリスは過去にUK Film Councilという組織がありまして、今はBritish Film instituteという組織と一緒になってしまったんですが、そちらの助成金を使って250スクリーンにデジタルが導入されています。しかし現在は、映画館が130社加盟して、2009年にDigital Funding Partnershipという組織を作りました。これは完全に民間の映画館だけで組織されていて、国の助成金等は一切使わずにデジタル化を推し進める仕組みになっています。形としてはVPFを使った仕組みなんですけれども、一社ずつ交渉するのではなくて、団体になることによって交渉力を高める、価格を押し下げるというような仕組みを採用しているのがイギリスの特徴です。 1124プレゼン資料19.jpg  ドイツは文化保護の目的で、国と州と映画センターのような国の組織のそれぞれ3つから助成金が出ていて、三つとも採用してデジタル化することができます。 1124プレゼン資料20.jpg  このBKM(文化メディア省)、FFA(連邦映画庁)、連邦州という三つの組織からそれぞれ助成金が出るという、一見、非常に素晴らしい仕組みのように見えるんですが、落とし穴がありまして、年間8千人の動員がない劇場はこの助成を受けることができません。そのため、実は取り残しが出てきてしまうという仕組みになっています。 1124プレゼン資料21.jpg  ドイツにおいては、商業的な映画館は自分たちでVPFを使ってデジタル化を進めるんですが、本当に小さい劇場に関しては、助成金も受けられないという問題が残っています。ドイツの一部には、VPFの仕組み自体がハリウッド主導の押し付けなのではないかという意見もあります。解像度が2K以下でもいいから、もっと小さい機材で安く購入することはできないんだろうかという議論もあるようです。しかしヨーロッパシネマとしては、ハリウッドが決めたDCIという基準が業界スタンダードなので、それに沿ったデジタル化をやっていきましょうという考え方になっているようです。 1124プレゼン資料25.jpg  スウェーデンにありますFHP(Folkets Hus och Parker)という組織の方に直接お話を伺うことができましたので、スウェーデンの現状についてもう少し具体的なお話をさせていただきます。 1124プレゼン資料23.jpg  この組織は、街の公園とかコミュニティセンターとか映画館を統括している非営利の団体です。元々は公園やコミュニティセンターを管轄していたところと映画館を管轄していたところが、機能がダブるという理由で合併したそうです。  ここには200の映画館がありますけれど、97%は1スクリーンしかないですし、大多数が地方や小さい都市にあるという状況で、こうした映画館は普通に私たちがイメージする映画館とは違って、週末だけ上映していたり、一日一回しか上映がないという映画館がたくさんあります。そういう劇場はスタッフの数にも限りがありますので、FHPが上映する作品を交渉したり、プリントをデリバリーしたりという作業を代行しています。スウェーデン全体のマーケットに占めるFHPのシェアとしては4.5%だそうです。  スウェーデンの映画館事情なんですけれども、SF BioというところとSvenska Bioというところと二つの大手があるそうです。この二社は資本の提携関係にあるので実質的に同じ会社なんですが、この二つのチェーンでマーケットシェアの80%を占めていると。さっきのFHPが4.5%ですから、ほぼこれで100%と言うくらい、寡占が進んだ市場になっているそうです。かつ、この80%の映画館は95%が大都市に集中していると。ですから、地方の劇場を担っているのはほとんどがこのFHPのメンバーという状況です。  この二つのチェーンが市場を独占していますので、ルールを全部自分たちで決めて運用していて、デジタル化自体はゆっくり始まったそうです。けれども、『アバター』を始めとする3D映画効果で、ここ数年で急速にデジタル化が進んでおります。2012年6月にはほぼ全てがデジタルになってしまって、35ミリが消えてしまうのではないかというのがスウェーデンの状況です。 1124プレゼン資料24.jpg  デジタル化に関しては、最初は国の補助金がなかったそうなんですけど、2009年くらいから国の補助金が出つつあるという状況です。 1124プレゼン資料26.jpg  FHPの会員は現在65館がデジタル化を終えていますが、20スクリーンに関してはまだ1.4Kのものしかないんで、これを2Kに移行しなくてはならないと。会員全体の32.5%がデジタル化している状況だそうです。 1124プレゼン資料27.jpg  「どうやってお金を集めたんですか」と聞いたところ、まずSwedish Film Instituteという、国の映画管轄部署みたいなところがありまして、そこが助成金を出していると。劇場ごとに1スクリーン、3万ユーロ、300万円くらいの補助金が出るそうです。全体費用が1千万円くらいということですから、ほぼ1/3ですね。残りはどうしたかと言うと、自己資金、借入金、地方の助成金、地元企業のスポンサーシップを取るといったような、血の滲むような努力でデジタル化を進めているということです。 1124プレゼン資料28.jpg  「今後、どういう風にデジタル化をしていきますか」と聞いたところ、政府の助成金が現在4年間で600万ユーロ、約6億円の補助が出ています。1スクリーン3万ユーロの補助金なので、200スクリーンをデジタル化することができるんですけれども、これがスウェーデン全体の助成金になりますので、この助成金だけで残りのメンバー135館をデジタル化するには資金不足です。ということで、やはり地方の助成金へのロビー活動をしたり、コンサートとかオペラの上映ですね、こういったものは価格を高く設定することができますので、こういった売上増のお金を貯めて、地方の劇場のデジタル化にあてるということを計画しているそうです。  「いつまでにデジタル化しなければいけないんですか」と聞いたら、「2013年中にはデジタル化を終えなければいけない、そういう危機感を持ってますけれども、現実的には2/3をデジタル化できれば成功と言えるのではないでしょうか」という、厳しい状況をお話されていました。 1124プレゼン資料29.jpg  「デジタル化のメリットはいかがでしょうか」というふうに聞いたところ、こういった三つのポイントが出てまして、前にヨーロッパシネマのところにも挙がっていたことと重複する内容となっています。 1124プレゼン資料30.jpg  特にここはフレキシブルな上映プログラムということを意識して努力をしておりまして、こういった作品をどんどん掛けているんですけど、実際お会いしてお話したときに「365日、毎日祭りです」と。「毎日違うプログラムを掛けることを最終的な目標にしています」ということで、多彩なプログラムを努力して組んで、人を呼び集めるべく活動されている、元気な劇場でした。もちろん会員全体で毎日違うプログラムを掛けられるわけではないんですけれども、大都市部にある四つの映画館では非常に活気のあるプログラミングをおやりになってました。 日本がヨーロッパから学べること 1124プレゼン資料36.jpg  最後にまとめさせていただきますと、まずデジタル化は止められないという認識があります。しかも、そのスピードは非常に加速していて、危機的状況であると。  二つ目としては、ヨーロッパには国の助成金があったり、援助の仕組みがあったりするんですけれども、やはりそれも万能薬ではないと。万能の解決策はなくて、いくつもの方法論を組み合わせて模索しなければいけないと。ヨーロッパでは10年前から話し合っていても、まだまだ解決策が見つからないというのが現状です。けれども、ヨーロッパから私たちが学べるのかなと思うのは、ネットワークを作ることによって交渉力が高まる、あるいはその知識、ノウハウの交流を促すことができるという意味において、ネットワークは有効なアプローチだと思います。  ヨーロッパと日本の状況が違う点として、二つのポイントがあると思います。ヨーロッパでは文化保護の意識が浸透しています。映画は文化であり、それを保護していくのは国の役割であるという考え方が、ある程度は共有されている。もちろん国によって多少の違いはあります。例えば、イギリスよりもフランスのほうが保護政策は強く存在していたりしますけれども、概ね了解されている考え方であると。二つ目としては、64%という小さい映画館の数のマジョリティですね。日本の場合は、小規模映画館が20%以下という状況ですので、こういった発言力の違いというのは踏まえなければいけませんけれども、ヨーロッパから学んで対応していけることは、まだいくつかあるんじゃないかと思います。 *PART3へ *PART1へ